回帰録2007ー6

イトウと岩魚2足のわらじ

更新履歴
北海道のイトウと岩魚
北海道のイトウ
人物紹介
書籍 文献紹介
意見感想
プロフィール

春、遠く過ぎて・・・更新が長らく滞り久し振りの挨拶になります^0^自分としては今年の北海道の夏はそれほど暑くなかったと思うんですが皆さんはどう感じたでしょうか?

年々フィールドで使う時間が多く恵まれ、その一方、データが溜まるばかりでなかなか更新に追い付かず今もシーズンをこなす毎日。それでどうもPCに向かえず、思い立てばあちらそちらへと車をとばし川の中を覗いてしまう。なんと言っても晩夏は東の果ての秘境を再開できたのが幸せだったのと、秋初めは東京から6歳になったばかりの、可愛いカワイイ甥っ子が夏休みで遊びにきたので、大都会では体験できない北海道に残される強い源に触れさせようと二人でキャンプに行き、ニチザリと腹一杯遊び、尺ごえの岩魚を釣らせることができたのが楽しかった。そして、近頃は単独で源流に泊まりで入ることも増え、自分がしたいことに没頭できる時間が増えた。新たに最軽量のドーム型テントも購入し、またザックの荷物が重たくなったのがどうしてか、それでも焚き火ができない所の源流では快適な一夜を過ごせ、潜った後の冷えた体を暖めるには役に立った。それに、しばらく止めていた釣りも何故か疼き、久し振りに2尺ごえの岩魚をかけてニンマリです!ただ何と言っても、前回で滞っていたイトウの産卵観察、聖地では開幕当初のとある所のバス停にある撒水栓で鍋を洗っていた時、目前70mほどを横切ったのは若い羆、それから季節を変え真夏の原野の森を縦走する林道でも熊が横切り、次回公開は東の果ての秘境でも、テントの傍らに現れる始末で、幻の巨大岩魚紀行でも熊だらけだった。今年の北海道はどうしたもんでしょうかねえ?

イトウの産卵は再び、途中で更新が滞っていた続きを記憶が薄れる前に思い出そう。

今年は全国的に雪解け、残雪が斑な状態で局所的に目立って見られたのは聖地周辺も同様に、少ない降雪、気温の上昇がないまま長々春が延びたのが今年の特徴で、新緑の躍動感が得られぬまま、だらだらとシーズンが過ぎ去った。

そして、今回も地元は今年で3年目となる敬一さんはもとより、遠方は私と同じ札幌から帰省していた弟さんともお会いでき、親しい友人の方は地元の漁師さんからの差し入れでご馳走になれた大好物の毛蟹は最高だった。それから、近隣支庁の猟友会の支部長さんに、カレイ・鮭釣りを案内とする自営の方、役場に務める若い人とお話ができ、午後7時から日本酒で始まって楽しく語らう穏やかな雰囲気で地元での出来事や、ここでしか聞けない噂を耳にしながらビール・・・と合わせ深夜24時過ぎまで語らい、その時の私は酒が弱いのと疲労が蓄積していたのもあって、途中で何の言葉も無くその場から立ち去ったことは、大変申し訳ないことをしてしまったと後悔しています。ごめんなさい・・・

上記画像は天然のシイタケ。北海道の各地を巡るたび地元の方と顔見知りになり教えられるのは、地域ならではのとっておきの場所と、そこに与る豊かな恵み。”田舎者は田舎に居らず”を実感しつつ・ちなみに、道内で一番と言って良いほど、物凄い数の天然エノキダケが一面に発生するのはここならではの特徴で、地元ではユキノシタとも呼び、同時期にヌメリスギタけも晩秋になると発生する。

イトウの産卵期が過ぎてしばらく、この地域の自然を一番よく知っている敬一さんに連れられ、原野の森奥深く、天然の隠し畑の隅々に発生するこれを含めた山菜を少々摘み取っては自宅でお持て成しを受けるんですが、見た目と違って私はあまり食べないのでいつも残してしまうのが申し訳ない。

最近、国土地理院の報告で・・・湿原の面積が過去と比較し1/40に縮小していることが分かったと。これを一般に公表するタイミングとしては既に遅かったんじゃないかと思うんですが、年代ごとに地形図が改正されるたびに度重なる河川改修と採草地が拡大されてゆく様が克明に映し出されていたのを見れば誰でも分かっていたことだと思います。あれを見る限りは意図的に保水される沼の水を排出しているとしか思えない。赤字で運営される採草地と放牧地の拡大は、牛の糞尿を大地に長年垂れ流しにし、地下水までをも汚染させていること確か、蛇行して本流へ注ぐ大支流の上流でさえ悪臭が漂っている。

多くの民はいつの時代でも土地を有効利用したいと、試しとその対価を望むもので、国がその声に満遍なく受け応えていては資源の枯渇どころか汚染が深刻になってくるはずですが、このままだらしない国政で北海道の貴重な財産を管理させていると全ての自然と資源が消失してしまう。上記の画像シマリスは、そこから流れ出る(排水路)?で写した一枚。

何かと話題を多く集める聖地は一大支流。全道的に種の保全運動が盛んになりつつある今、国内で自然繁殖が確認されている水系が14との報告で、その数も極めて少ないというもの。ただ、あくまでも過去の調査記録での比較で、例えば日本で最も自然繁殖が安定する2つの支庁、聖地周辺を重点的に記録している範囲では、そこだけで定着なくとも産卵だけの遡上であれば現在のところ8水系を確認しているので、この地域にどれだけ集中しているか、各支流と細部を含めると今後もまだ新たな回帰河川を確認できる可能性も含め、他支庁でもまだ確認できると私は見ています。

そして、単に河川への依存というよりは、生息に適す河川が隣接し合う海域間との関係が整う場が大きく影響していること、この2つの海域に回帰する定着なくとも産卵だけで利用される小河川を含めると、環境の変動に対応でき得る条件がまだ残されている奇跡と底力があるのは、ここならではだと実感しています。それも壊れずらい・・・シベリアの永久凍土の溶解が危ぶまれるタイガの森も、一度壊れると2度と再生できない脆さを危惧すれば、今後、ここは重要な所になってくると思います・・・

ちなみに一大支流を一般で最初に紹介した研究者は当時の雑誌、RISE VOL.2 94〜95Pの(未知なる生態を探る その種族の根を絶やさぬために必要な条件とは)からで、詳細地名を伏せた内容、確か1998年の春、取水場に北海道・土現が97年に復旧治山事業?の名目で魚道付きの落差を施工、そこに大勢の学生さんでしょうかを引き連れていたのを拝見していますが、施工後の2年間までは、産卵期の2週間だけに限定すればこの一点だけで15分に一匹の割合で大小様々なものが続々と遡上する場面が見られ、魚道とその落差両脇を乗り越えようと果敢に挑戦する光景が見れたのも、その後を最後にあれほどの大群を見ることはなくなった。

それが意味することはどういうことか、この支流について多くを語ることはできないんですが、自然繁殖だけに頼る生産量は、細流の密集する数でも本流と他支流とでも比較できるように、今までは日本で一番数多くの親魚が回帰していた一大支流であったことは、周辺水系と比べても圧倒的な数であったのは当方で記録する数字でも密集度は明らかに高かった。

白サケやサクラマス、カラフトマスが産卵で使われる区間と場所はそれほど上流で行われないのと比べ、イトウが遡る上限は皆さんが想像する以上に深く、水源からの距離も10`以上の区間を必要として使われていることです。私はイトウ専門の研究者とだけ誰一人と交流がないので、率直な部分を述べることができると思っています。そして、地元で暮らす人々の意識と扱い方も、上っ面な付き合いからでは本意はおろか、長引く北海道経済の低迷に喘ぐ道民意識の耳を傾けてもらうこと暗い。

現実的に、雇用対策に頼る地元人と、希少価値を糧に食べていこうとする地元人がいること。そして、その隙間心理に付け入る人達がいることは、ここ聖地にとってより望む進展は得られず、イトウの為になっていない。

こんなことを言うのは大変申し訳ないが、扱い方を知らない遠方の人たち、それが釣り雑誌関係者でもあるように、必要に地元を煽り立てるのは無責任で、保全運動が盛んになる一方、研究目的だからと産卵遡上してきた個体を捕獲し、矛盾にダメージを与えている愚かな者が現れていること。これが近年、雑誌で紹介されているのを見て呆れてしまった・・・

現段階では、研究材料としての資源材料は極めて乏しく、生息地に対する規制も漁業権が制定されている箇所を除き何も無いそこでは、あらゆる人との接触は多大な負荷圧がかかっていること、自然界で遡上から産卵まで完結できる確立は、3〜5回にわけ堀を起し卵を産み分ける若年齢層の雌に対し、たった一箇所だけで堀を作り産み終える熟練とでも言える高齢の雌は、産卵域までどれだけ体力を温存できるかで、抱える卵の全体のどれだけを産みきる事ができるか、産卵生態だけを観察しているだけでも見えてきます。

その辺は、環境の変動に対する適応力でも、その年の降雪量と気温で繰返される増減水が5〜7回、そこまで辿り着ける障害と体力次第でたった一粒の卵さえ産まずに終える雌が見られることでも、如何に不完全な種であることが窺えられます。

研究者だから規制ない生息地の地名を安易に公表をして構わないのか?キャッチ&リリースを徹底すれば数少ない河川残留ポイントを教えて構わないのか?それぞれ勝手な思い込みと意図で扱う生息地と生息数は決して改善されるものではなく数の安定も望めない。

イトウを愛しく思う釣り人、魅力を訴える釣り人、そこにロマンが繋げるのは、豊かな原生と秩序が保たれてこそ実現できるものだと信じています。プロの釣り人は日本だけでなく、海外の釣り場、川の様々を見て体感している経験は貴重で、ブランド物で対価を得る以前に、プロでしか経験できない知見を文章に置き換えて売り出さないと、その分野で強い影響力は発揮できないはずです。

とりあえず今回までの更新はここまでに抑え、次回は東の果ての秘境を近日中に公開したいと思います・・・