09.8月 知床No.2
2009年、知床半島、鮹岩海岸にて
10年前に初めてカヤックで知床に来た時から、いつかは自分の舟をと!友人のタンデム艇=ウォーターフィールドのシースポツインで来る度、言い続けてようやく今年になって自分の舟を手に入れた。シングル艇も比較対照するだけ数を乗っていないのでどこのMKが何でどうだというわけもなく、迷ったあげくN・Dの”シュマール”にしました。その感想は?・・・二つの荷室にはドライスーツから水中カメラ機材、1週間分の食糧にビール500mlの缶15本、テントからなにやら車に積んできた殆どの荷物が入ってもまだ余裕があったので積載容量は申し分なかった!・・・
8月中旬、ここへ来るまでの天候待ちで無駄にした日数は3日間。気象予報は当てにならず現地ではめまぐるしく空模様が変わる。仕方がないか・今年の目的は?そう、北海道の全てが凝縮されている原生の空間に入ること、そこで半年間、我慢していた釣り欲をたった数日間で満たすことだ。それともう一つ、願わくば上陸し手付かずの沢に入りカラフトイワナを・・・
ウトロ側から半島先端までの距離は、机上からでは直線で38`ほどだが、実際の航路は最短を選んで進んだつもりでもGPSの奇跡では片道80`を超えてしまう。
出発当日、午前7時過ぎに漕ぎ出し岩尾別を過ぎた辺りからカラフトマスの群れが目立ち、見つけては竿を出しながら比較的のんびりと釣りをしながら進む。食事を摂るため鮹岩海岸に上陸したのが10時過ぎ、ルシャを境に羆の姿が目立つのは例年のことながら、慣れは禁物!と肝に銘じ、去年と今年の2年間は単独行もあって慎重に行動したつもりだ。
それにしても何処を見ても’くま’クマ’熊’!去年、お会いした地元調査員の忠告を想い出すが、今回は文吉湾でお世話になった漁師の佐々木さん夫婦によると、27年間、ここで漁を始めて番屋の中から羆が吠える声を真近に聞いたのは初めてだと言っていたように、7月初旬は親子熊を含めると一日に4頭は水揚げされたホッケを目当てに姿を現したり、ウニ漁の最中にも関わらず海上にまで熊が襲ってきたと言う。羅臼側では駆除はでるがウトロではでない?の”しわ寄せ”の影響が表れているように感じられた。
ルシャ川の海岸風景。
観光船の往来が激しいなかでのパドリングには結構、神経を使った。シーカヤックって凄い乗り物ですよね!シンプルな作りながら世界中どこへも行ける!そんな夢さえ想像させる究極の舟、グレートジャーニー・・・
もう見慣れた光景、波が立っていて岸よりに吹く風でパドルから手を離すと、たちまち熊との距離が近くなり、適当な位置を保つのが難しい。湾内で目視できただけで5頭はいた。こんな狭いところで本当に人と共存できるんだろうか?この先にある鮹岩、そして、3年前までキャンプを張ったレタラワタラに到達した時、観音岩と並んで河口を陣取るのは巨大な黒毛グマだ!♂なんだろうなあ・・・ああ、その姿を見たときは諦めがつく、写真を撮るために岩礁地帯を縫って進み熊との距離をはかるが波が若干荒く距離が保てない。去年と同じカパルワタラに戻っては面白くないよな?そう呟きながら岬先端に辿り着いたのが15時前後、そこで折り返し文吉湾に入る。
ピンボケで分かりずらいですが、足腰がゴツい黒毛の羆。
ライフジャケットのポケットに黒砂糖を入れ、ほぼ15分おきに口に放り込んだ。おかげで全く空腹になることなく半島先端まで行けた。羅臼川、文吉湾の真裏に位置するユリおばあちゃん、今年も来てるのかなあ?先端からそこの番屋までには30分ほどの距離だから、どうせここまできたんだからいっその事、行っちゃおうかなあと考えました。天候もまあまあ、それなりにのんびりきたので疲れもそれほどでもない、でもさすがに年齢を感じたのは’腰’ですね!
後で聞いたのはユリおばあちゃんは今、番屋にいないということ。足を骨折し斜里の病院に入院しているそうだ。
文吉には番屋が2軒ある。上陸して最初に門を叩いたのが向って左、外からも蛍光灯がついているから誰か居るはずだと重たいスライドドアを開き、ごんめんくださいと何度か声を出すが返答はない。それからもう一軒、数10m離れた番屋に向かい家屋の中を覗くと親父さんが居た。
あと30分はやくきたら風呂が入れたのにね、もう捨てちゃったよ!はじめは父さんだけの姿が見えたが、お母さんの姿もみえる。夫婦でウニ漁ができる期間、2ヵ月間ほどここに滞在するそうだが、今年は天候に恵まれず2週間も漁ができなかったと溢していた。今年2009にここまでやって来た旅人は20人ほどで、私が来る前にいた若い調査員2人も私が来る明朝に帰ったことで、佐々木さん夫婦はウトロの我が家へ帰る準備をしていた直後だったらしい。
いまは分からないけど、今年、最後の旅人になったのかなあ?誰かにお世話になったとき、はじめて人の温もりを感じるものですよね・・・
翌日、ここを折り返しウトロへ向かう。駆け足ながら1泊2日の知床、往復120`の旅だった。