17章
なんだか駆けだし当初の写真へ振り出しに戻った一枚でお恥ずかしい限りの2011年の春。雪代水で増水するところに雨、後半は積雪が20cmも・・・こういう年もあります。
更新が遅くなりました。帰りたくなかったです・・札幌より帰省してくる’せいじ‘さんや息子さんより先に来て、帰るのも私が遅いというのはご家族には大変迷惑をおかけし申し訳ないところでしたが今年は産卵が短かったせいでいったい何をしに行ったもんか、とにかく毎日酔い潰れてました。楽しかったです^0^!また来年ですね・・・
17回目となった春イトウ。気持ちは10代、体は20代のつもりで折り返し地点を迎え辿った後を振り返ると体の一部は50代!?瞬きするたび鬱陶しい残像が左目に薄らと浮かび上がる。まだ歳を感じるには若い?と思うんだけど、体の何処か1つのパーツが故障しただけでも普段通りに動くだけで変な所に力が入り疲れる。これで去年までやってきた同じことを今回もこなせるかと思うとちょっと不安があった。体を大事に使えという危険信号であれば無理もできない、でも希望は出来れば2週間は床を掘って欲しい?から1日に支流を3本は答えがでるまで虱潰しに歩き通す事になる。黄斑変性になる原因は喫煙者の男性は50歳以上の高齢者に多いということくらいしか分かっていないだけで、発症前日に深酒をしたのは直接的要因ではなかったと医者が言うように現在もあれから毎晩、倍以上の量を飲んでいるが抗酸化ビタミンと亜鉛の服用により進行は止まり治癒に向かっている。だからといってこれから先も酒を多く飲んでも体に良いことはないし健康な右目にも発症する恐れもある。そんなことに神経を使うと余計に疲れてくる。それでも!空気の美味しい空の下でまた敬一さんたちと酒を飲み明かしたい・・・。
ここへ来て10日目、林道の先頭を走る敬一さんの車が止まり窓から手を出し指差す先には、たった今横切ったばかりの足跡が残雪に印されていた。今年は春までで6頭の熊が村に入っているというからなるほど、湿原に入るとミズバショウの根を掘り返し食べた痕跡がそこらじゅうに散らばって、その周りには鼻を摘まみたくなるほど臭い糞が山盛りに積まれている。数は明らかに増えていて近隣市町村からも雌を追って雄熊がその後を追って出入りしているようだ。まず何処に入っても痕跡を見ない所はなかった。そして今回、林道で初めて熊と鉢合せした。
下り坂の林道を車でトコトコと残雪を押し潰しながら降りてカーブを過ぎた所にぼ〜と横向きになって立ちすくむ熊が目に飛び込んできた。およそ2秒後、私に気が付いた途端、直線の林道上をまっしぐらに駆けだした?
あいつは何だ、普通は林道から外れ笹藪に逃げ込むもんだけど空が開けた直線の林道を真っすぐに、それもこちらに背中を向けたまま逃げるんだから唖然として6秒ほどの間、逃げる後ろ姿を眺めていた。それから距離にして100m前後の辺りで立ち止まり振り返ってこちらを見つめてきた。
まず北海道で野生の熊と遭遇できるのは知床くらいなもんで他で出会うことは滅多にない。私がこの村で熊を至近距離で見たのは4年前?河口付近の住宅街だった。村で今後ここ以外で遭遇できる所があるとすれば熊越えの沢かなと思っていたところ意外な場所で出くわしたもんだ。
じっとお互い見つめ合ってどれだけ経ったか、熊が立っている直線の林道には残雪は無いが今降りてきた後ろの坂には分厚い残雪が登りきった辺りまで続き、そこを登り返すには狭い道幅で何度もハンドルを切り返し方向を変えて、それから前進したり後退したりを繰り返さなければ登りきれない。融雪が進む後半の雪質はかき氷のようにざらざらして一度タイヤを空転させると溝に雪が詰まってグリップしなくなる。そうなると向かって来られると10秒以内には追いつかれ、車内に居ても引きずり出されてしまう。撃退スプレーは有るが相手を倒すことはできない・・・となれば刺激を与えないようにこちらが退散するしかない。案の定、もたもたしながらどうにか登り切り敬一さんのところへ逃げ帰った。
その後、敬一さんに話しても相手は向かってくることないよと笑われたけど、間違っても熊と取っ組み合いになることは御免だ。19年前、仕事でお世話になった熊撃ち(マタギ)当時は確か77歳だったか、17歳から鉄砲をやっているだけあって笹藪の歩き方が獣のように素早く付いていくのが大変だったのを思い出す人も、そう世の中にはいないだろうが、それでも私が知る熊撃ちの中では敬一さんはどなたにも該当しない稀な気質で、鉄砲を持つ以前、当時村に存在した体重400`はあるだろう巨大な熊をナイフだけで追い回したと聞くように、若い頃は相当めちゃくちゃきかなかったらしい。順風満帆な人生を送った人より波乱万丈の人生を送った人の方が経験が役に立つ。イトウの産卵を見つめて17年間、一部を除く場所’仮名:一大支流’以外で同じ方と2度以上お会いした人は敬一さんと他1人だけ。多くの人たちが集まる一大支流ではたくさんの方達とお会いすることがあっても一歩外れた場所に行くと熊と鹿の足跡しか見ることはない。今年は初めて私に声をかけて頂いた方とお会いしましたが・・・広い北海道も意外と狭いもんですね。